2019年鑑賞映画「アルキメデスの大戦」

2019年邦画興収ランキング16位。
19億3千万円を稼いだ。

2019/7/29に鑑賞

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菅田将暉、柄本佑、舘ひろし、国村隼、橋爪功、田中泯、浜辺美波、笑福亭鶴瓶。



1945年4月。
鹿児島県沖を行く戦艦大和に襲い来る無数の米軍機。
次々と落とされる爆弾と魚雷。
甲板の兵士は吹き飛び、やがて船腹に多数被弾し穴を生じた大和は徐々に傾き、ついには転覆。
そして大爆発を起こし、海中に沈み3000名の戦死者を出した。
(史実では2740名が戦死、約270名が救助)



話は12年ほどさかのぼる。

日本帝国海軍の新型艦製造にかかる会議が海軍省で行われようとしていた。
これからの主力は航空機であるとして、航空母艦を支持する山本五十六少将(舘ひろし)と、
その上司の永野修身中将(国村隼)。

一方、対立するのは巨大戦艦を推すのは嶋田繁太郎少将(橋爪功)。
海軍大臣の大角岑生(おおすみみねお、小林克也)も巨大戦艦の模型に魅せられた。

しかも、山本らの推す航空母艦の建造費見積もりは1億6千万円。
嶋田の推す戦艦の見積もりは9千万円とあって、航空母艦は劣勢を強いられた。
一旦は戦艦で意見を集約されそうになるも山本の激しい反発で結論は持ち越しとなった。

その夜、料亭で対策を話し合う、永野、山本、藤岡。
巨大戦艦の建造費が安いのは経費をごまかしているのではないかと疑う。

同じ料亭で芸者を独占し、豪遊していた帝大生の櫂直(かいただし、菅田将暉)。
山本が、芸者衆の一部を回してくれと頼みに行くと、櫂は軍人が大嫌いだからと言って断る。
櫂は、尾崎財閥の娘、鏡子(浜辺美波)家庭教師を首になり帝大も退学させられていた。
さらに、以前、嶋田少将と面会した時、戦艦を無駄遣いだと言って激怒されたことがあった。

山本は櫂の下宿を訪ね、戦艦の費用の欺瞞を正さないかと依頼する。
櫂が程なくアメリカに留学すると答えると、山本は日本とアメリカが戦争になる、と言い出す。
山本は巨大戦艦ができれば国中が強大な軍事力の幻想を抱き、アメリカと戦争になる。
それを阻止するために櫂の力が要る、と諭す。

櫂はアメリカ行きの客船に一旦は乗船するが、見送りの人々の中に鏡子の姿を見て下船する。
櫂は鏡子が戦火にさらされる幻影を見て、山本に協力することを決意する。

山本は櫂を経理部門監査担当の少佐に任命し、運転手の田中(柄本佑)を櫂の部下として
補佐するよう指示した。

見積もりの秘密を暴こうとして、天才数学者を任用した話は嶋田陣営にも伝わっていた。

嶋田配下の平山は資料を極秘扱いとして櫂の活動を妨害する。

次回の検討会議までわずか2週間の間に戦艦の建造費のからくりを見抜くことはできるのか。
そして、それは山本の言う通りアメリカとの開戦回避に結び付くのか。

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冒頭の大和撃沈シーンは見事だった。
史実さもありなんと思わせるに十分。

ラストの大和航行シーンも含め、VFXは見事だった。
「釣キチ三平」や「カムイ外伝」のCG、VFXの悪印象が強かっただけに、
10年の歳月はまさに隔世の感あり。



いくら有能でも全長220m超、全幅35m、4万トンにもなろうかと言う巨大艦を
たかが数mの巻き尺で図ることは不可能。
パイプや鋼板のサイズを測ったところで、表面に見える物だけで構造を推し量ることは困難。

まして大和から初めて採用された構造や素材について、在来艦の巻き尺で測れる数字からは
何もわからないはずだ。

そもそも細かい積算をせずに鉄の総量と計算式一発で金額がはじき出せるとは思わないが、
仮にそれがはじき出せたとして、建造費がわかるだけで、平山はなぜそんなものを欲しがったのか。

また、金額がいつの間にか建造費から発注額に変わっているのもおかしい。
建造費の積算を発注先に丸投げしているのだろうか。

戦艦推進派が癒着企業と結託しているのであれば、空母推進派はなぜ同様の企業を持ってないのか。
企業の出した見積もりが正規の建造費として認定される仕組みであれば裏取引の有無にかかわらず、
安値で請ける企業を持ってない時点で空母推進派の負けは決まったようなものだ。

原作では、平山は櫂の卓越した先進技術を盛り込んだ設計情報を入手すべく画策するようだ。
そのために櫂を懐柔するのであれば、それは十分納得がいく。



原作者は、国立競技場建て替えに伴うごたごたから本作につながるヒントを得たらしい。
大和の建造計画が金で揉めたかもしれないという発想は面白いものの、現実には金額の問題ではなく、
巨艦主義か、航空主力主義かの論争だったと思われる。

第二次大戦以降の巨大戦艦の役割は戦艦対戦艦の撃ち合いによる海戦を制することではなく、
いわゆる艦砲射撃により上陸部隊を支援、あるいは沿岸地域の敵を撃破することが主目的になった。
しかし、これは制海権を掌握し、攻撃地点の射程範囲まで航行できることが前提。

制海制空権を持たず、航空機による攻撃を受ける場合、巨艦は大きな的になるだけ。

ただし、大きな的になるのは航空母艦も同じ。
空母自体の防御力は逆に戦艦などよりも劣るため、空母を主力とした艦隊、
すなわち空母と巡洋艦、駆逐艦、潜水艦などを連携した攻撃群を編成して運用される。

帝国海軍においては、真珠湾奇襲攻撃でアメリカ軍艦隊を航空機によって破壊したにもかかわらず、
空母はあくまでもわき役と考え続け、巨艦主義からの脱却はならなかったようだ。

また、大和は単独の艦ではなく、大和級、あるいは大和型として、2番艦、武蔵も造られているし、
3番艦、4番艦の建造計画もあったようだから、一つの艦だけの価格がどうこうという問題ではない。

そもそも戦艦は単独行動をとるものではなく、駆逐艦や巡洋艦、空母などと旗艦たる戦艦を含む艦隊で行動する。
艦隊をどう編成するのか、在来艦と併せ何を何艘作るのか、が肝要。

空母を作るのであれば、当然艦載機や陸上の航空基地も問題になってくる。
単艦当たりの建造費の問題ではなく、海軍の軍事費全般にかかる配分の問題。



大和を沈めることで戦意を削ぎ、逆に国家滅亡を防ぐとの考えは一見まともだが、
それを自国軍の中枢が意図していたとしたら、それはそれで悲惨だ。

鑑賞時には全く別の感想を抱いた。
それはあるTV番組での話。
終戦間近にアメリカ軍による焼夷弾爆撃で多くの人々が焼け死んだが、それは市民に対する無差別攻撃だった。
爆撃はエスカレートし、そのままでは日本全国を焦土化し、日本人を焼き尽くすほどの非人道的作戦であった。
原爆投下は、破滅的な大量破壊兵器を使用することにより、非人道的な無差別爆撃を止めさせるための手段だった。
その効果は予想以上に絶大なもので、悲惨な結果をもたらしたものの軍当局に無差別爆撃を辞めさせるには十分だった。

原爆は戦争の早期終結を目指したものではなく、より非人道的な焼夷弾爆撃を止めさせるためだったという。

じゃ、なぜ原爆を2発も落としたんだ。
軍部内部のせめぎあいと言うか権力争いがあった可能性はあるが、もたらした結果が予想以上に悲惨なものだったのは
事実としても、ウラン型とプルトニウム型原爆の実験に日本を利用しただけで焼夷弾爆撃を止めさせるためとは到底思えない。

荒唐無稽ともとれるこの説と、日本の軍事力の象徴たる不沈戦艦大和を沈めることで日本軍、日本人に
目を覚まさせる的意見に同じ臭いを感じたのは私だけだろうか。

結局のところ、思っていた内容とかなり違った。
監督が描こうとしていたものは、かなり矮小化してしまったのではないかとさえ思う。



戦艦大和がなぜ作られたのか、大和は作られるべきだったのか、乗組員の悲劇、戦争の悲惨さなどには一切関係なく、
今なお人々を魅了するその姿は美しい。

大和ミュージアムには、なんと1/10(全長26.3m)の模型があるそうだ。

現在は戦艦はすべて退役しているが、軍事オタクでなくても戦艦に魅せられるのは、洋の東西を問わないようで、
近代兵器が太刀打ちできない宇宙からの敵を記念館となっている戦艦ミズーリをもう一度動かして撃破する映画がある。
(2012年の「バトルシップ」)
なお、ミズーリは大和より長いが細いので,排水量としては大和のほうが大きい。

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