プレSE奔走す、「加藤の退職」 その4

しかし、ある事件があって事態は一変した。

それは、加藤に補助担任の番が回ってきて、
担当のクラスでプログラミングの基礎を教えたときのことだった。

加藤はそれまでの講義のおさらいをするつもりで簡単な質問をし、
回答に新人の一人を指名した。

彼女は、その簡単であるはずの質問に答えられなかった。
加藤は、前の講義ではやらなかったの、と聞いたが、
彼女はその講義に出られなかったと答えた。

加藤がその答えの意味することがわからず、怪訝な顔をしていると
一番前の席に座っていた新人が、彼女、国際合宿です、と小声で教えてくれた。

会社の知名度アップと社員の意気高揚を狙って
多くのアマチュアスポーツのクラブを持つ会社が多い。

しかし、単に実業団として全国大会に出るレベルならともかく
世界選手権やオリンピックを目指すとなると、普段の練習の他、
国レベルの強化合宿、遠征、国際試合への参加が必須だ。

学生時代からその分野で有望な選手で、全日本のメンバーでもあった彼女が
日元アイシスへ入社した。

新人教育は当然受けるが、海外での強化合宿を連盟から指定され、
それに参加していた。
その合宿が明け、新人教育に戻ってきたのだ。

それに気が付いた加藤は軽い気持ちで、
ああ、仕事をしなくてもいい人ね、といった。

この言葉は彼女に少なからずショックを与えた。

彼女はその日の研修日誌に
「結局、仕事をしなくてもいい人と見られていることは悔しいです。」
と書いた。

新人の研修日誌はまとめて人事部へ送られる。
この内容は翌日の午前中には人事部長の知るところとなり、
加藤はその午後から担任を下ろされた。

加藤は人事から目を掛けられる存在から、
一転して人事に目をつけられる存在になってしまった。

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加藤の退職-第1回
加藤の退職-2
加藤の退職-3
加藤の退職-4
加藤の退職-5
加藤の退職-6
加藤の退職-7
加藤の退職-最終回

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