それは、加藤に補助担任の番が回ってきて、
担当のクラスでプログラミングの基礎を教えたときのことだった。
加藤はそれまでの講義のおさらいをするつもりで簡単な質問をし、
回答に新人の一人を指名した。
彼女は、その簡単であるはずの質問に答えられなかった。
加藤は、前の講義ではやらなかったの、と聞いたが、
彼女はその講義に出られなかったと答えた。
加藤がその答えの意味することがわからず、怪訝な顔をしていると
一番前の席に座っていた新人が、彼女、国際合宿です、と小声で教えてくれた。
会社の知名度アップと社員の意気高揚を狙って
多くのアマチュアスポーツのクラブを持つ会社が多い。
しかし、単に実業団として全国大会に出るレベルならともかく
世界選手権やオリンピックを目指すとなると、普段の練習の他、
国レベルの強化合宿、遠征、国際試合への参加が必須だ。
学生時代からその分野で有望な選手で、全日本のメンバーでもあった彼女が
日元アイシスへ入社した。
新人教育は当然受けるが、海外での強化合宿を連盟から指定され、
それに参加していた。
その合宿が明け、新人教育に戻ってきたのだ。
それに気が付いた加藤は軽い気持ちで、
ああ、仕事をしなくてもいい人ね、といった。
この言葉は彼女に少なからずショックを与えた。
彼女はその日の研修日誌に
「結局、仕事をしなくてもいい人と見られていることは悔しいです。」
と書いた。
新人の研修日誌はまとめて人事部へ送られる。
この内容は翌日の午前中には人事部長の知るところとなり、
加藤はその午後から担任を下ろされた。
加藤は人事から目を掛けられる存在から、
一転して人事に目をつけられる存在になってしまった。
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加藤の退職-第1回
加藤の退職-2
加藤の退職-3
加藤の退職-4
加藤の退職-5
加藤の退職-6
加藤の退職-7
加藤の退職-最終回
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関連図書
(国税庁の受注戦でのプレSEの活躍を描く、ドキュメントタッチのビジネスフィクション)
「プレSE奔走す」 ISBN4-434-07543-8 1200円
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