今日の弁当日誌は臨時休止で、塩豚の作り方(12/22)

今日は弁当を作りましたが、急いでいて写真を撮り忘れたので、 弁当日誌は臨時休止。 塩豚の作り方を載せますが、まったくの我流。 一切の料理本を参考にしていませんので、間違っていても責任は取りません。 まずはバラ肉。 全体にまんべんなく塩を振ります。 レシピ本を見ていないので、一般的な塩の量(比率)はよくわかりませんが、 おそらくかなり多いと思います。 ローリエ(ローレル、月桂樹の葉)を乗せて、 ペパータオルで包みラップします。 このまま常温、もしくは冷蔵保存します。 翌日。 かなりの水が出ています。 包んだペーパータオルんがびしゃびしゃです。 ペーパータオルとラップは捨てます。 水分を拭い、全体に軽く塩をして、新しいペーパータオルで包んで更にラップ。 さらに翌日。 まだかなり水が出てます。 同じようにペーパータオルを知り替え、ラップします。 さらに翌日。 もう水はあまり出ません。 一応、ペーパータオルとラップは交換し、置きます。 これで、肉の鮮やかな赤が、くすんだ色になれば完成。 我が家では完成品を、ラップして冷凍保存してますが、 包丁で切れる程度の硬さになりますが、それ以上のカチカチにはなりません。 なお、多く塩をしたので、そのままではとてもしょっぱくて食べられません。 塩は軽く洗い流しますが、それでもしょっぱい…

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中国語版「プレSE奔走す」

先日、とある大手情報処理企業の部長連中と飲んだとき、この本の話が出た。 ひとつには、直接この本の内容ではないが、 御厨(みくりや=小説の主人公)を題材に関連して書いたブログ小説に 実在の顧客が、実際の話と混同して反応し、 小説=架空の話であることを理解してもらうのにずいぶん苦労したことがあって、 それをネタにひとしきり盛り上がった。 もうひとつ、これは中国のソフト開発会社担当の部長さん(日本人)の言だが 中国語に翻訳して売れば相当売れるはずだ、ということ。 実際問題中国ソフトウェア業界の実情をまったく知らないので、 本当にそうなるかどうかはわからないが、しゃれやお世辞ではなく、 まじめなご意見として伺った。 ただ、中国での書籍流通のしくみや販売の仕組みについてもまったく知らないので、 今のところ具体的なことは何もできないが、面白い観点だなと思ったしだいです。 最後に、続編はどうなった、とも言われたが、これについてはまた後日。

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プレSEとは?

たまにこうやってIT系の話題も書くんですよ。 お弁当は毎日ありますけどね。 さて、「プレSEとは何か?」と考える前にまず「SEとは何か?」を考えなければいけません。 SEは通常、システム・エンジニアの略と思う人が大半でしょう。 ソフトウェア・エンジニア、サービス・エンジニアなどをSEと呼んではいけないこともないし、 ソフトウェア・エンジニアとシステム・エンジニアの明確な定義や差異があるかといわれると、 甚だ心もとない。 しかも特段の資格が必須というわけでもないし、特別の学業を修めている必要があるわけでもない。 しかし、たいていの場合、というか一般的には、要求定義や、基本構想、基本設計など、 いわゆる上流工程を担当するものをいう。 あるいは、プログラマや、ソフトウェア・エンジニアの上位職種として規定し、 やっていることは変わらないなんて場合もあるようです。 しかし、ここでは、SEを上流工程から担当する職種としましょう。 では、プレSEとはなにか。 プレは、通常は、プレセールスの略といわれます。 システムを受注して、ここではいわゆるパッケージソフトではなく、 受注生産、受託システムを言っていますが、 一番最初に行うのが要求定義と要件定義だとかシステム化範囲だとか、 システムの概観を決めていく作業ですが、 プレSEの仕事はそれに至る前、システムを受注するのに必要な作業一切合切を担当します。 場合によっては、何が書いてある…

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プレSE、仕様採否のヒントは「3」

KGR「今日は御厨さんが、いつもおっしゃっている『3』あるいは『1/3』についてお話したいと思います。」    「御厨さん、よろしくお願いします。」 御厨「おはようございます、よろしくお願いします。」 KGR「早速ですが、3について。3と言ってもお笑い芸人のネタじゃないですよね。」 御厨「もちろんです。」    「それでは、『3』というか『1/3』というか。     あるいは3%、30%と言っても良いですが、3と言う数字にはヒントがあるということです」 KGR「では、一般的な話から、かな。お願いします。」 御厨「はい、KGRさんもよくご存じだと思うんですが、統計で正規分布と言う物があります。」 KGR「数学でやりました、もうよく覚えてません。偏差値と関係ありましたっけ?」 御厨「そうそう、偏差値では平均を50として、標準偏差を10として計算したものですよね。」 KGR「標準偏差ってσ(シグマ)でしたっけ。」 御厨「そうです、そうです。2シグマとか3シグマとか。」 KGR「そういえば『3シグマ』ってあだ名の人がいました。発想が飛んでいるというか、かなり際立って違う。」 御厨「今でいえば、偏差値20以下か、80以上ってとこですね。上位あるいは下位の0.3%です。」 KGR「おっ、3が出てきましたね。」 御厨「正確には、平均からプラマイ3シグマのなかにほぼ99.7%が入るので、そこから外れるのは0.3%、    まあ、…

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公共工事の積算

公共工事。 国や地方自治体の発注する工事です。 道路や橋、港湾、ダム、公園、庁舎、公会堂、体育館、、、、。 もちろんたいていは本当に必要なものばかりでしょう。 しかし、なかには趣旨は立派なのに運用を間違ったのか、 大して利用もされず、維持管理が大変で、 赤字垂れ流しの存在価値の薄いものもある。 例の「私のしごと館」などはその典型? 対象年齢は異なるが、似たような施設の「キッザニア」が 大盛況であるのとは雲泥の差がある。 いやここでは、そのような施設設備が必要かどうかはここでの議論の対象外。 ここではその価格付けについて考えてみる。 公共工事は先も書いたように、国や地方自治会の「発注する」工事。 国や地方自治体の職員自らが工事を行うわけではない。 とはいえ、もし仮に職員が、工事責任者や工事担当者を集め、 指示し、作業管理をするとすれば一体いくらくらいかかるだろう。 発注するなら自分たちがやるより安くないと意味がない。 自分たちがやるとすれば、一体いくらかかるのか。 この見積もり計算が「積算」と呼ばれる。 そして、積算によって算出された、発注金額の目安を 「予定価格」 と呼ぶ。 工事には、原材料費と人件費だけではなく、工具や用具類が必要だ。 作業によっては資格も必要だし、特別な機材もいる。 工事のやり方によっても大きく費用が変わってくる。 それは、工事本体の技術的なやり方だけでなく、 たとえば…

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こんにゃくのピリ辛

今日は弁当がないので、時々弁当に入れたりもする、こんにゃくのピリ辛。 材料は板コン。 3ミリくらいの薄切りにします。 食べやすいように半分に切ってもいい。 お好みで細切りにしてもいいですが、細かくするほど味が濃くなりますので、 サイズに合わせて味付けを調整します。 隠し包丁を入れます。 食感と味が染みやすくするため。 「切る」というより包丁を「当てる」だけで良い。 片方だけでもいいし、写真のようにクロス切りでもいい。 こんにゃくは洗ってよく水を切ります。 フライパンにゴマ油を熱し、そこにこんにゃくを入れます。 水気で油が跳ねるで、やけどと火が入りやすいのに注意します。 少し水気を飛ばしたら、砂糖、醤油を入れて炒め煮の感じで。 電池交換している間に醤油が少し焦げましたが、ここまで行くと炒めすぎかも。 唐辛子を振って完成です。 トウガラシの量はおこのみで調整してください。 酒のつまみなら、少し辛めで唐辛子は多め。 お弁当のおかずなら、少し甘めで唐辛子は少なめにしてください。

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「工事進行基準」その4

この物語はフィクションです。 KGR:さて、前回までは、「工事進行基準」と「工事完成基準」のいずれも   正確が見積もりが大事なことがわかりました。   「工事完成基準」では、完成まで売り上げが立たないので、   途中の期では「仕掛品」計上を行うところまで聞きました。   今回はいよいよ、「工事完成基準」と「工事進行基準」の違いと   その問題点をご指摘いただきます。 山田:「工事完成基準」では期をまたがるような長い工期の契約の場合、   途中の期では、売り上げが計上できませんが、費用はかかっています。   そこで仕掛品という考えが出てくるわけです。   工業簿記の個別原価計算の仕組みでは必ず出てくることですが、   加工費という考えを使います。   工業簿記の勉強が目的ではないので、算出の仕方は省略しますが、   簡単に言うと1時間当たりの作業費がいくらか、というものです。 KGR:でも1時間と言っても社員ごとに給料も違うし作業効率も違います。   いくらかは一律には言えないのではないですか。 山田:ですからそこは省略しますが、部門ごと、従業員のランクごとに、   作業効率や、寄与率、ベテランの方が効率はいいわけですが、   逆に管理や指導など直接作業以外の仕事も増えてきます。   そういうことも寄与率という考え方で考慮します。   そして、係数をかけたりしながら、総作業時間を算出し、     実際に払うことになるだろう人件費の総額をそれ…

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「工事進行基準」その3

この物語はフィクションです。 KGR:いよいよ、「工事進行基準」と行きたいところですが、   前回も話に出た「工事完成基準」について説明してください。 山田:わかりました。   「工事完成基準」とは、文字通り工事、この場合はシステムですが、   それが完成した時点で売り上げや利益を計上するということです。 KGR:なんか、当たり前のような気がしますが。 山田:そうですね。直感的でわかりやすい。   実際に完成した時点ですから。   もっとも会社によってどの時点を「完成」とするかは多少微妙かもしれません。 KGR:と、言いますと? 山田:工場出荷時点なのか、納品時点なのか、   顧客検収完了時点なのか、それとも入金時点か。   通常は、顧客検収完了時点でしょうが、工場出荷時点のところもあるでしょう。 KGR:入金時点、つまりお金をいただいたときが売り上げではないのですか。 山田:そうしているところもあるかもしませんね。   でも大抵は現金の受け渡しではなく、口座振替でしょう。   まとめて支払いするし、同じ取引先からの入金と相殺する場合もあるし、   検収後末日締め翌月末払い、なんてのが一般的でしょう。   入金されるまでは「売掛」となるわけです。 KGR:ああ、付けにしておいてまとめ払いってことですね。 山田:そうです。 KGR:それでいいと思いますが、何か不都合でもあるんでしょうか。 山田:たとえば、工…

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「工事進行基準」その2

この物語はフィクションです。 KGR:今回、御厨さんの先輩SEである山田さん(仮名)に来ていただき、   工事進行基準についてお伺いする予定でしたが、   システムの見積もりについて、で終わってしまいましたので、   今日はその続きです。   山田さん、よろしくお願いします。 山田:こちらこそよろしくお願いします。 KGR:さて、先日は今申し上げたように見積もりの話でしたが、   これは工事進行基準と関係ない話ですか。 山田:いえ、大いに関係があります。   もともと、先日お話したようにきちんとシステムの機能を整理して、   機能規模を算出し、そのほかの開発条件も加味して見積もりをはじきます。   これは本来工事進行基準とは関係のない話で、   工事進行基準だろうが、工事完成基準だろうがやらなければならない話です。 KGR:工事完成基準とは? 山田:それは後でお話しします。   今の段階では、工事進行基準と工事完成基準がある、と思ってください。 KGR:わかりました。 山田:つまり、見積もりは予算で、工事進行基準にしろ完成基準にしろ、   経費計上や利益算出の方式ですから、実算、ということになりますが、   実算の計算方式によって予算の精度が変わること自体がおかしいわけです。 KGR:そりゃそうですね。 山田:ところが、一部メディアの中には、今まではどんぶり見積もりだったが、   工事進行基準にしたら、いい加減な…

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「工事進行基準」その1

この物語はフィクションです。 KGR:今日はいつもおいでいただく御厨さんの先輩で、   もう現役は退かれたんですが、   長くシステム開発業務に携わっておられた   山田さん(仮名)においでいただきました。 山田:こんにちわ、よろしくお願いします。 KGR:山田さんは、長く大型システム開発に従事されていたと   お聞きしましたが、御厨さんとはどういう。 山田:そうですね。   ミクちゃん、あっと、失礼、御厨君は、プレSEで、システム受注の支援、   現状分析やら、基本構想やら、いわゆる川上、上流工程の担当、   我々は受注したシステムを実現する部隊、川中の担当です。 KGR:なるほど川上と川下、しつれい川中でしたね。   川上産業とか、川下産業とかいう言葉も聞きますが、あれと同じですか。 山田:業界業種によって意味合いは違うかもしれません。   システム開発の場合、川上はいわゆる上流工程です。   これも人や会社によって、範囲は微妙ですが、   さっき言った現状分析、基本構想、基本計画、システム化の検討、   概念設計とか、予算計画とか、言う場合もあります。   川中は、設計、製造、テストですね。   これらにももう少し細かい区分がありますが。   それと、川下は、運用、維持、保守、改善と言ったところでしょうか。   次期システムにつながる大切な工程でもあります。 KGR:今日のテーマである工事進行基準の関連で言うと。 …

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プレSE「御厨」

KGR「今日はシステム受注で活躍されるSE、つまりプレSEを    長年やってこられた御厨さんに来ていただいています。    御厨さん、こんにちわ」 御厨「こんにちわ。いつもありがとうございます。」 KGR「先日はありがとうございました。」 御厨「いやぁ、こちらこそ。・・・先日ってなんでしたっけ。」 KGR「あれですよ、米原潜の放射能漏れの、」 御厨「ああ、科技庁、いや文科省の原潜監視システムの件ですね。」 KGR「はい。」 御厨「それが?」 KGR「いえね。科技庁と外務省でまたぞろ、縦割り行政の弊害かな、と。」 御厨「それはどうなんですかね。私は外務省のことは知りませんし。    私がやったのは科技庁の原子力艦船の放射能監視システムですからね。」 KGR「それそれ、あまり知られてませんよね。」 御厨「どうなんでしょうね、わたしどもが広報活動をするわけじゃありませんし、    中には国家機密だったりするシステムもあるわけで。」 KGR「あっさり言いますね。例えば、どんな?」 御厨「国家機密ですか? そんなの言えませんよ。    でも一般に知られてないとか、敢えて知らせていないという意味では、    そうですね、会計検査院のシステムとか、    まあ、おっしゃった科技庁のシステムもそうなんですけど。」 KGR「会計検査院って、取れなかったやつですか? 」 御厨「そうそう、結局何をやっているかすら秘密なんですから、    内…

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「プレSE奔走す」原潜放射能漏れ

先日、米原潜の放射能漏れに関連して、 >「文部科学省の調査で特異な数値は検出されていない」 との記事がありましたけど、 実は、岩壁のすぐ近くの環境放射能を常時測定できるようにしていて、 変化があれば自動的に警告を発し海水を採取する仕掛けがあるんです。 原子力艦船(原潜を含む)の日本寄港については、 米軍から日本政府に通告がありますので、 寄港中は監視体制を強め、文科省の担当者が 24時間体制で監視に当たります。 現実の問題として測定に乗らない程度の変化なら感知できませんが、 「米軍艦船による放射能漏えい」となると、環境に影響があったかどうか 以前の問題ですから、文科省に責任をおっかぶせることはできません。 国民の安全や知る権利より、事を荒立てたくない、面倒は避けたいと言う 外務省の体質がまたも露呈した事件でした。 話は戻りますが、前述の放射能検知システムは、 まだ科技庁時代に最初のシステムが作られたもので、もうかなり経ちますから、 機材は勿論、システムも更新されたことでしょうが、プレSEが活躍しました。 それまではセンサーのメーカーやら通信系の会社で、 がっちり固められていた中にコンピュータシステムの会社が、 割り込んで商戦を展開した形でした。 この顛末は、この本には直接は出てきませんが、 同じようなプレSEのせめぎあいがあったことになります。 実はこの顛末も取材してあって、そのうち整理した公開したいな、 と思って…

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自動生成系迷惑ブログなるものがあるらしい。

ここもときどきリンクされてていたりするが、 例えば「プレSE」で検索すると、 「プレSE奔走す」関連の小説の記事が引用されているサイトが多くヒットする。 確かに、あるキーワードについて、例えば「プレSE」について言及していて、 関連するブログを紹介しているようなものもあるが、 単に記事やそのタイトルを羅列しているだけだったリ、 記事の内容を断片的に引用して別の文章に組み立てていたり、 趣旨の分かりづらいものもたくさんある。 これらのうちのいくつかは、自動生成系と呼ばれるものらしい。 あるキーワードに沿って、そのキーワードでヒットする記事を引用して羅列する。 その結果このキーワードに関して引用したページがヒットする確率が、 オリジナルの引用されたページより高くなりそうだ。 それでずいぶんと長い間その意味するところ、意図するところがわからなかったが、 中には、ページにリンクしているサイトへの誘導や、 クリック回数を稼ぐことを目的としているところもあるらしい。 統計によれば、これらを迷惑ブログに分類するところもあるようだが、 元より迷惑とは何か、は人によっても状況によっても違うので、何とも言い難い。 ともあれ、プレSEに関して言及がないどころか、 引用したブログ記事の断片をつなぎ合わせた記事では、 引用された側にはメリットはない。 とは言え、明白なデメリットもどうなのかはっきりしないから、 「薄い」ブログがたくさんある、程度の捉えられ…

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プレSE奔走す「加藤の退職」その8、最終回

御厨が料金を支払い、二人は別れた。 立川から聞いていた話は大分様子が違った。 辞めさせるくらいなら片意地張らずにもう少し早い段階で 相談してくれれば、と残念には思ったが、 いまさら嫌味を言ってもしょうがない。 御厨は加藤と別れ、自席に戻ってから立川に電話した。 そして、次の会社が決まっていてもう止めるのは無理だと伝えた。 立川は判った、ありがとう、と言葉少なに語った。 所属の部署が気に入らないからと言って、 異動させてくれと言うわがままをいちいち聞いていたらきりがない、 嫌なら辞めろくらいの態度で立ち向かわないと、 あそこの課長はわがまま言えば通るぞとなってしまう。 それも一理ある。 しかし、それは個別の事情を無視した統計的な管理手法だ。 異動の希望はわがままなのかそうでないのか、 異動により他で伸ばせるのかダメを輸出するだけか、 この見極めと育成は管理者の責務だ。 もちろん、本人の資質と能力もある。 通り一遍の対応でみすみす優秀な若手を辞めさせてしまう。 上手の手から水が漏れることもあるが、 ざるで水を救うようにはなっていないか。 上司の対応としてはもう少し言いようがなかったのかと悔やまれる。 加藤は、予定通りその月の末日付けをもって退社した。 彼は日元アイシスを去ったが、 御厨の記憶に残る社員の一人となった。 *** 加藤の退職-第1回 加藤の退職-2 加藤の退職-3 加藤の退職-4 …

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プレSE奔走す「加藤の退職」その7

「おお、例の電線引っ掛けたやつか。」 「はい、その節はお見舞いに来てくださってありがとうございました。  あれで親がずっと心配してまして。」 加藤が入社二年の目のときだったか、バイクで川原を走っていて、 たまたまイベント用に臨時で仮設されていた電話線に首を引っ掛けて 転倒事故を起こしたことがある。 幸い軽傷ではあったが頚椎捻挫、わかりやすく言えばムチ打ち症になり、 二週間ほど入院したのだ。 御厨は課長として当然見舞いに行ったが、 これが一人暮らしで心細かった加藤には大変感激だったらしい。 「それよりもさ、開発系の仕事なら俺んとこでやらないか。  別に立川さんのところがダメだからって  辞めることまでは考えなくて良いと思うけどね。」 「実は、立川課長に相談したときも  部署を変えてくれということが最初だったんです、開発に。」 「それじゃ、丁度良いじゃない。」 「それで、その後、小野部長と面談したときに、部署の異動なんかできない、  俺の下でやるか辞めるかだ、と言われたんです。  絶対異動させないって。」 「ひでえなあ、そりゃ。  ひどい目にあったね、異動させないなんて。いまなら何とかするよ。」 「はい、それはとても嬉しいんですけど。  我慢するか辞めるかだって言われてたんで、  相手のシステム開発会社と話を進めてしまいまして。」 「まだいいんじゃないの。もう決めちゃってるの。」 「ええ。お話をもう少し早…

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プレSE奔走す「加藤の退職」その6

御厨は座りながらやや大きな声でオーダーをすると、 加藤に向き直って話を始めた。 「辞めるんだって。」 「ええ。静岡に戻ろうかと思っているんです。」 「どうして。新人講師のことなんか引っかかったりしてるの。」 「いえ、あれはもう気にしてないです。」 「急でびっくりしたんじゃないの。」 「ええ、その時は。  自分も悪気があって言ったわけじゃなくて、  あっ、話は聞いておられると思いますけど。」 「うん、聞いてる。」 「それで、自分としても会社の知名度が上がってくれるといいな  と思っていましたし、彼女もそれが仕事の一つなのだから、  研修やってなくても十分仕事をしてくれているわけですし。  それが、ああいった言い方になってしまって、  彼女には悪いことをしたと思っているんです。」 「うん、そうだろうね。  人事も過剰反応だと思うよ。」 「いえ、まあ、人事も日報に書かれた以上、  自分をはずさざるを得なかったと思いますから。」 「ずいぶん悟りきっているじゃない。」 「その時は大分へこみましたけど。」 「そうだろうと思うよ。  それで、辞めるのはどうして。」 「なんか、ちょっと今やっていることが  あまり自分に向いてないんじゃないかって思ってまして。」 「そんなことはないと思うよ。  まあ、立川さんのところは運用が中心だから、  開発系の仕事は少ないかもしれないけどね。  加藤君はこの業界…

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プレSE奔走す「加藤の退職」その5

加藤は人事から目を掛けられる存在から、 一転して人事に目をつけられた存在になってしまった。 人事部が宣伝をしたわけではないが、 その経緯はたちまち社内に知れ渡り、御厨の耳にも入った。 翌日、三時少し前、御厨に電話が入った。 加藤だった。 「もしもし、加藤ですが。  立川課長に言われまして、近くまで来ました。」 「ああ、加藤君。  久し振りだね、今どこにいるの。」 「分室の近くのトヨタのショウルームの前の公衆から掛けてます。」 「ああ、そこか。  じゃあ、そのすぐ傍に果物屋があるでしょ。  その脇に階段があって二階がサテンになっているから、  そこへ入ってくれる? すぐ行くよ。」 「あ、はい。  判りました。それじゃ、お待ちしてます。」 御厨は電話を切ると、上着を着て手帳を持って立ち上がった。 彼は課長席のすぐ傍の係長にちょっと出てくるといって、 件の喫茶店に向かった。 喫茶店は事務所から一、二分のところにあり、 そこには加藤がコーヒーを前に神妙に座っていた。 「おーう。久し振りだね。」 「あ、すみません。わざわざありがとうございます。」 加藤は立ち上がって本当に済まなさそうに礼をした。 「何言ってんの。  こちらこそ、わざわざ来てもらって悪かったね。  ここは外から見えにくくてね、サボるのに丁度良いんだ。  果物屋がやってるからジュースがうまいんだよ。  すみません、ミックスジュース。」 …

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プレSE奔走す、「加藤の退職」 その4

しかし、ある事件があって事態は一変した。 それは、加藤に補助担任の番が回ってきて、 担当のクラスでプログラミングの基礎を教えたときのことだった。 加藤はそれまでの講義のおさらいをするつもりで簡単な質問をし、 回答に新人の一人を指名した。 彼女は、その簡単であるはずの質問に答えられなかった。 加藤は、前の講義ではやらなかったの、と聞いたが、 彼女はその講義に出られなかったと答えた。 加藤がその答えの意味することがわからず、怪訝な顔をしていると 一番前の席に座っていた新人が、彼女、国際合宿です、と小声で教えてくれた。 会社の知名度アップと社員の意気高揚を狙って 多くのアマチュアスポーツのクラブを持つ会社が多い。 しかし、単に実業団として全国大会に出るレベルならともかく 世界選手権やオリンピックを目指すとなると、普段の練習の他、 国レベルの強化合宿、遠征、国際試合への参加が必須だ。 学生時代からその分野で有望な選手で、全日本のメンバーでもあった彼女が 日元アイシスへ入社した。 新人教育は当然受けるが、海外での強化合宿を連盟から指定され、 それに参加していた。 その合宿が明け、新人教育に戻ってきたのだ。 それに気が付いた加藤は軽い気持ちで、 ああ、仕事をしなくてもいい人ね、といった。 この言葉は彼女に少なからずショックを与えた。 彼女はその日の研修日誌に 「結局、仕事をしなくてもいい人と見られていることは悔しいです…

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プレSE奔走す、「加藤の退職」その3

「いやいや、彼もこの辺は、ほら、昔いたわけだからよくわかっているしね。  そのほうが良いでしょ。」 「判りました。お任せします。」 「それじゃ、明日の午後でも良いかな。」 「ちょっと待ってください。えっと、大丈夫ですね。」 御厨は、手帳を確認してそう言った。 「三時頃なんかどうかな。彼もここまで来るといろいろあるだろうから  近くから電話させるよ。」 「結構です。」 「それじゃ、そういうことで。お茶ありがとう。」 立川が帰ると、同じ分室にいる松井課長が御厨の傍にやってきた。 「立川さん、何だって。」 「いやあ、松井さんも知ってますよね。加藤俊文。  彼が辞めるって言ってるらしくって、話を聞いてやってくれって、  止められるならぼくんとこにくれるって。」 「加藤君ね、できは良かったのにな、どうしたんだろ。  研修のことが後引いてるのかな。」 「うーん。どうですかね。」 日元アイシスの新人研修は、新人を三十人程毎にクラス分けをし、 入社から三ヶ月間集合教育で行なっていた。 この間、会社は入社数年目の先輩の中から優秀な者を選抜し、 クラスごとに全期間を受け持つ専任の担任一名と、 期間は細切れで交互に半分程度の期間を受け持つ補助担任二名を 割り当てていた。 三十名ほどの新人の最初の指導が、主にこの三名に委ねられるということだ。 各講義はいろいろな講師が担当するが、 社会人として最初に生活指導をす…

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プレSE、「加藤の退職」その2

「おお、そうそう。君のところにいた加藤君て知ってるよね。」 「知ってるも何も、加藤俊文ですよね。私の新人でしたから。  今、課長のところですよね。」 「うん、その加藤君がね、辞めたいって事で相談があってね。」 「えっ、初耳ですけど。」 「うん、最近の話なんだよ。」 「新人講師を下ろされたって話は聞きましたけど。  それとの関連はないんですか。」 「ああ、ちょっとした行き違いがあったらしいけど、直接は関係無いと思うよ。」 「それで。」 「うん、いろいろと話を聞いたんだけどね。  親父さんの関連で静岡に戻るって言ってるんだ。」 「はあ。」 「それ以上、詳しい話はしてくれなくてね。  それで、君が信頼できる人がいたら話をしてもらえるかと聞いたら、  御厨君、君の名前が出てきたんだ。」 「はい。」 「まあ、もう僕じゃ止められないんで、もし話を聞いてもらって  引き止められるようなら君のところへ引き取ってもらってもいいし、  ダメならダメでしょうがないかなって思っていてね。」 「判りました。でもどうして私なんですかね。」 「さあ、僕にもわかんないんだけど、  御厨君にはずいぶんお世話になったって言ってたよ。」 「判りました。」 「じゃあ、どうしよう。彼にこっちへ来させようか。」 「そうですね。なんなら私のほうから行っても良いですけど。」 「いやいや、彼もこの辺は、ほら、昔いたわけだから…

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プレSE物語 「加藤の退職」その1

部下が一人も辞めたことのない管理職はおそらく存在しないだろう。 辞めたいと言われて、待ってましたと言うこともあるだろうし、 何とかして辞めさせたくないと思うこともあるだろう。 直属の部下でなくても退職の相談を受けることもある。 これは、御厨が課長時代に遭遇したある退職の一シーンである。 ------------- 「やあ、久し振り。」 「立川課長。どうされたんですか。」 「いや、実はちょっと御厨さんに折り入って相談があってね。」 「何でしょう、ま、お座りください。」 突然、御厨の先輩である立川課長が、三番町の分室に現れた。 御厨は立川にソファを勧め、自分も席からソファに移った。 御厨は立川と一緒に仕事をしたことはないが、 組織変更前に同じ事業部だったこともあり、 部課長会議や、事業部のゴルフコンペでよく一緒になった。 が、今は直接の接点はない。 御厨には立川が折り入っての話の見当がつかなかった。 「いやあ、この事務所は初めてだなあ。」 「あ、そうですね。すぐ判りましたか。」 「うん。竹田君に地図貰ってね。」 「この分室もできてから、二年になりますけど、相変わらずで。」 「お茶、どうぞ。」 「あ、藤川さん、ありがとう。」 二人にお茶を出した女性は、にっこりと微笑んで下がった。 「いいね、ここは。女性がお茶を出してくれるなんて。」 「ええ、ここは庶務がいないですから。 …

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「プレSE奔走す」経済社会小説22位。

Amazonの経済社会小説で22位(最初みたときは19位だった)に入ってました。 いったん在庫が切れたようですが、まだ版元には在庫があるので、すぐに入るでしょう。 (Amazonは、取次を通さず版元と直取引するらしいです。=また聞きですので違っていたら御免)

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プレSE、「少額訴訟」 最終章、その4(最終回)

今回のように水面下の時点から話を頂き、 水上に顔を出す前に信頼を勝ち取ることが出来れば、絶対的に有利である。 勿論、入札には一発勝負のばくちのような面があり、 取れない可能性もあるが、ここで十分な信頼を得ていれば、 またお話を頂くことが出来るのだ。 逆に、この時点でだめな会社だと思われてしまえば もうお呼びは掛からなくなる。 技術的にダメと思われれば論外であるが、 技術的に優れていても人間的にダメ、 信用が置けないと思われれば終わりだし、 夢を描けなくてもダメだ。 プレSEのアナログ的なプラナーの素養が問われる。 しばしば要求と本音が異なることがある。 本当にやりたいことは何か、をあぶりだして、 果たしてそれは予算と予定の期間で実現できるのかを考える。 そしてそれらが実現できないとき、 どの部分をどういう風にあきらめてもらうのか、 どういう形であれば実現できるのか、 それはお互いにとって、譲れる部分なのか、 それらを判断しながら全体像を詰めていくのだ。 自分がいくつの引き出しを持っているかも大事だが、 全ての面に知識、技術を持つことは不可能だ。 どんな人物が自分のために動いてくれるのか、協力してくれるのか、 そこから知恵を借りてくれば良い。 それがプレSEの活動範囲を広げてくれる。 IT用語ぽく言えば、テクノロジー/ナレッジの ヒューマン・ネットワークの広がりが プレSEのノウハウの一端を形成していると言っても過…

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プレSE、「少額訴訟」 最終章、その3

システムは、十二月末に利息計算の部分が先行して納品された。 法律の施行に合わせて完成を急いだのだ。 十二月下旬には、関東近辺の各地裁から事務官が召集され、 教育が実施された。 段取りは、諫元と富田が行い、もちろん片山も立ち会ったが、 指導は富田のチームが対応した。 判決文の作成の方が急げば急げたのだが、 手書きでも凌げるからと三月末の納品となった。 こちらは、年度始めの四月に再び事務官を召集して教育を実施し、 桜井のチームが指導に当たった。 また、話のあったヘルプデスクも富田のところで行うこととなった。 開発を担当しなかった判決文作成の部分も対応することとなったが、 この部分はそれほど難しい操作でもなく、問題はなかった。 時々、仕様変更の類の希望もあることはあったが、 ヘルプデスクの報告書に盛るとともに、片山を通じて最高裁にも伝えられた。 一部の要望は正式に仕様変更として依頼があり、受注につながった。 新年度の予算で機器を購入するところが出て、 インストール作業やマニュアルなどこまごました作業も発生した。 いずれも金額的には小さいものであったが、 一つのシステムの受注から受注がつながっていく好例と言える。 このように新規のシステムに食い込むことは、 その顧客と継続的にお付き合いをする絶好のチャンスとなる。 だからこそ、ニューカマーは是が非でも取ろうとするし、 元々入り込んでいたベンダーは何が何でもリプレースされまいとする…

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プレSE、「少額訴訟」 最終章、その2

十月に入って一週間ほど経った日の午後五時で入札は締め切られ、 直ちに開札となった。 公式に伝えられたわけではないが、どうやら入札した企業は 結局日元アイシスだけだったようだ。 予定金額は当然ながら、発表されなかったが、 おそらく二千万円を少し上回る金額と思われたので、 日元アイシスの入札価格はそれを下回り、落札することが出来た。 片山は大いに喜んだ。 金額を自分が仕切ったことも満足感を増した。 御厨に報告をしようと思ったが、御厨は客先から直帰して戻ってこなかった。 御厨は翌日も客先直行になっていたので、片山はメールで落札を報告した。 翌日朝、片山がメールを開くと、御厨が夜メールを読んだらしく 返事が入っていた。 しかしそれは、よかったね、と言う意味の短い文で片山の感激振りとは違い、 随分と覚めたものだった。 片山は、最高裁への落札のお礼に御厨に同行して欲しいと思っていたが、 御厨はあっさりと断った。 御厨は別の用事があるし、あとは富田と宜しくやってよと言う感じだった。 富田や桜井を信頼していると言えば聞こえは良いが、 取れてしまえばもう良いやとも感じられた。 実際、この後の打ち合わせに御厨は参加しなかったし、 時々フォローはしているようだったが、進捗や仕様に立ち入ることはなかった。 片山は当初不満だったが、富田が精力的に前に出てくれたので、 問題になることはなく片山も御厨の助けは必要ないと思うようになっていっ…

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プレSE、「少額訴訟」 最終章、その1

最終章 開札 この件は予定より少し早く掲示板公示になった。 その日、諫元から片山に連絡が入り、片山はすぐに仕様書を取りに行った。 片山はすぐに御厨に連絡をとったが、彼は不在でメールでの連絡になった。 暫くして、片山が見積り会議の段取りをしている頃、メールの返信が来た。 できるだけ早く見積り会議をするようにとの指示だった。 ここまでは、片山の予想通りだったが、次の一文は片山の想定外だった。 すなわち、御厨は当分時間がとれないので、 自分の予定を考慮せずに会議の日程を決めるようにとのことだった。 片山は会議を自分が仕切るつもりではいたが、 御厨が参加はしてくれるものと思っていたので一瞬戸惑った。 しかし、そうも言っておれない。 御厨も言うようにできるだけ早く見積り会議を開催することの方が大切だ。 半ば強引に関係者の同意を取り付け、3日後には見積り会議の予定を入れた。 今まで準備をしていたとはいえ、社内事務処理を考えると、 3日後とはかなりきついスケジュールだったが、 何とか間に合わせることができた。 片山は御厨に言われたとおり、見積り会議を仕切り、 「二千万を切らなきゃダメだろう。」と固執する尾藤の顔も立てて、 一九八〇万円で入札することでまとめた。 富田の部分が千二十万円、桜井の部分が九百六十万円だ。 桜井は多少不満があったようだが、併注にするという前提でこれに応じた。 入札は金額一本で、内訳などはないが、 併注にする…

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プレSE、「少額訴訟」 第八章 その9

日元アイシスでは、損益責任は設計にあった。 赤字も黒字もその原因は関係なく設計が責任を持つのだ。 このあたりは会社によって違うかもしれない。 損益の責任を設計が持つのか、営業が持つのかと言うことにもよる。 損益責任を設計が持つ場合、 一定の利益を確保できなければやらないという選択肢は設計の手中にある。 原価高で損をしても、赤字受注で損をしても設計が怒られるのは同じ。 原価高になるのは自分の責任だからしょうがないが、 赤字で受けて怒られるのは癪に障る。 せっかくの受注チャンスを儲からないからと、棒に振ることもあり得る。 営業は儲けが出ようが損をしようが責任は些少。 基本的には、受注額が評価の対象となる。 取れなきゃ意味がない、安くても赤字でもとにかく取ればいいと思いがちになる。 一方、損益責任を営業が持つ場合、 設計はあらかじめ約束した原価の範囲で仕事をすればいい。 それ以上に売りが高くて儲けても、売りが低くて損をしてもそれは営業の責任だ。 そのかわり、営業は戦略的な受注がやりやすくなる。 いわゆる「損して得取れ」的な動きができるのだ。 しかし往々にしてこの「得」は先々の見込みであることが多く、 結局、空手形に終わることも多い。 また設計は、自分の領分さえ守っていればいいという気持ちが起きやすい。 儲かろうが損しようが自分のせいではないと言う気になりがちだ。 いずれにせよ、この方針が営業や設計の戦略にも大きく影響する。 永…

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プレSE、「少額訴訟」 第八章 その8

駅までの帰り道、御厨は富田に話しかけた。 「見積り会議とかやった? 」 「まだですね。  部内での打ち合わせはやってますけど、入札はよくわかんなくて。」 「営業も入ったんだろ。」 「ええ、いろいろ説明してましたけど、  営業の希望額がよくわかんないんですよ。はっきりしないというか。」 「なんだ、しょうがないな。片山、いくらで入れる気なの。」 御厨は片山に話を振った。 「えー。僕自身は、二千万くらいと思っているんですけど。」 「それで、富田んとこと桜井んとこの金額は。」 「おんなじくらいでお願いしたいんですけど。」 「お願いしたいって俺にお願いされても困るなあ。  一千万ずつか。富田良いの、一千万で。」 今度は富田に話を振る。まるで、司会者の様相だ。 「まあ、それでないと取れないって言うんなら頑張りますけどね。」 「そういうことだ。片山が頑張んなくちゃ決まんないぞ。  取れりゃ良いってもんでもないのよ、設計は。  安すぎりゃ取らないほうがましってこともあるのよ。」 赤字受注は言い換えれば金を付けて売るようなものだ。 実際にかかる金よりも安く売っていれば、そのうち会社の経営は破たんする。 「そうですね。二千万なら確率高いと思います。」 「営業内も仕切れよ。  どうせ尾藤さんは、安くても取れりゃ良いと思ってんだから。」 「そうですかね。」 「そうだよ。  よく言ってんじゃん、取れな…

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